靴下をはいたような新種のクラゲを発見しました

こんにちは、としのです。

この度、山口県周防大島町のなぎさ水族館の濱津芳弥飼育員、内田博陽飼育員との共同研究により、瀬戸内海から新属新種のクラゲを発見し、学名をCaltsacoryne setouchiensis(カルツァコリーネ・セトウチエンシス)、和名をシトウズクラゲと命名しました。新しい属名はシトウズクラゲ属Caltsacoryne です。

シトウズクラゲ(固定標本)

シトウズクラゲは傘の高さが7 mm ほどの小さなクラゲで、傘は釣鐘状、傘縁瘤(さんえんりゅう)に眼点があり、4本の触手の先端に球状の刺胞瘤(しほうこぶ)があるのが特徴です。詳細はWeb図鑑をご覧ください。 シトウズクラゲ(四国未記録) | 公益財団法人 黒潮生物研究所 (kuroshio.or.jp)

2016 年から2018 年にかけて周防大島町沖家室で採集した7 個体の標本をもとに、詳細な形態観察 とDNA分析による分類学的精査を行ったところ、触手の本数や形状、刺胞瘤の有無、生殖巣の形状、口柄(こうへい)の長さなどの組み合わせ、塩基配列(DNA)の違いにより新属新種であることがわかりました。

採集の様子。なぎさ水族館の濱津さんは日本屈指のクラゲハンター

今回、周防大島で発見したシトウズクラゲは、花クラゲ目と呼ばれるグループに属します。花クラゲ目には、春先に日本各地で現れるカミクラゲやドフラインクラゲなどのような、丸みを帯びた傘や長い触手をもつ種が多いグループです。

和名「シトウズクラゲ」 命名について和名の「シトウズ」は、足袋の原型になったとされる親指が分かれていない履物のことです。漢字では「襪」と書きます。襪は日本の神社や寺での重要な儀式に使用されます。シトウズクラゲの特徴である触手先端の刺胞瘤が履物をはいているように見えることから名付けました。ちなみに和名がつけられる前には「長くつ下のピッピ」をもじり、ピッピと呼ばれていました。

学名の 「Caltsacoryne setouchiensis」 はギリシャ語の「Kaltsa」と「Koryne」を組み合わせたもので、それぞれ「靴下」、「こん棒」を意味します。また、「setouchiensis」は採集場所である周防大島が位置する瀬戸内にちなんで名づけられました。

シトウズクラゲは冬から春にかけてみられるクラゲです。なぎさ水族館では毎年、シトウズクラゲを採集し、展示しているので、ぜひともその愛らしい姿を観に来てください。靴下のような触手をどのように使って泳ぐのか、その目で確かめてもらいたいと思います。

瀬戸内海にはまだまだ多くの未知なるクラゲが潜んでいると考えられます。これからもクラゲの採集調査を継続し、得られた研究成果を一般の皆様に還元して、「身近な海のクラゲ」たちの魅力をお伝えしていきたいです。としの

なぎさ水族館にて(左から濱津芳弥さん、戸篠、内田博陽さん)

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