主任研究員
経歴
- 2005年3月 大分県立佐伯鶴城高等学校 卒業
- 2005年4月 北里大学水産学部水産学研究科 入学
- 2009年3月 北里大学水産学部水産学研究科 卒業
- 2009年4月 北里大学大学院水産学研究科修士課程 入学
- 2011年3月 北里大学大学院水産学研究科修士課程 卒業
- 2011年4月 北里大学大学院水産学研究科博士課程 入学
- 2014年3月 北里大学大学院水産学研究科博士課程 卒業
- 2015年4月~2017年4月 公益財団法人 黒潮生物研究所 研究員
- 2017年5月~2019年1月 琉球大学熱帯生物圏研究センター瀬底研究施設 ポスドク研究員
- 2019年2月~現在 公益財団法人 黒潮生物研究所 主任研究員
研究領域や意気込み
私はクラゲの分類や生態について研究しています。クラゲの起源は古く、5億年以上前のカンブリア紀にはすでに誕生しています。現在、クラゲは約4000種知られていて世界中のあらゆる水域に生息しています。なぜこれほど繁栄しているのか、その理由の一つとしてクラゲの「柔軟性」が挙げられます。クラゲは浮遊生活するメデューサ(クラゲ)と底生生活するポリプを世代交代する生活史をもちます。特にポリプは劣悪な環境でも生き延びることができ、好条件下では爆発的に増殖するなど生息環境に柔軟に適応できます。しかしながら、クラゲについてはよくわかっていないことが多く、研究の基本となる分類や生態についてもっと調べる必要があります。私は野外では観察困難なポリプを飼育下で詳細に観察することにより、クラゲの生存戦略を明らかにしたいと思い、日々の研究活動に取り組んでいます。
主となる研究テーマ
四国西南部におけるクラゲ類の多様性および季節的消長に関する研究
四国西南部沿岸は黒潮が近接する海域であり、多種多様な生き物が生息するホットスポットです。しかしながら、クラゲについては情報が少なく、どのようなクラゲいるのかほとんどわかっていません。そこで四国西南部の代表的な湾である宿毛湾を中心に定期的にクラゲ採集を行い、どのようなクラゲがいつ、どのくらい出現するのか調べています。すでに予備的な調査も行っていて、夏になるとタコクラゲがたくさん出てきて、まるでパラオにあるジェリーフィッシュレイクのような景色がみられました。また、日本初記録となるクラゲたちも見つかっています。さらに調査を進め、より多くの種を見つけていきたいと思います。
猛毒をもつ立方クラゲ類の分類および生態学的研究
お盆過ぎに海水浴するとクラゲに刺されるといわれますが、その犯人は立方クラゲと呼ばれるクラゲの仲間です。立方クラゲはBox jellyfishとも呼ばれる箱型の傘をもつクラゲの仲間で、全身にある毒針のカプセル(刺胞)には猛毒があり、刺されると激しく痛みます。沖縄に生息するハブクラゲは特に危険で、年間100~200件の刺傷被害があり、これまでに3件の死亡事故が起こるなど公衆衛生上の大問題となっています。しかしながら、立方クラゲ類の分類や生態に関する研究は不十分であり、刺傷被害対策を行うための基礎的な情報が不足しています。本研究では世界中に生息する立方クラゲの分類を整理するとともに未だ明らかにされていないハブクラゲの生態を明らかにしていきたいと思います。
日本産淡水クラゲ目の系統分類学的研究
淡水クラゲ目は刺胞動物門ヒドロ虫綱(ヒドロクラゲ)の仲間です。マミズクラゲのように淡水に生息する種もいますが、そのほとんどは海産です。藻場に生息するカギノテクラゲは漁師やダイバーを刺傷することが知られていて、重症例も報告されています。また、最近ではキスイクラゲが世界各地で外来種として問題視されています。その一方、ハナガサクラゲは色彩豊かで美しい姿をしているため、水族館における展示生物として重宝されています。
現在、淡水クラゲ目は世界で52種、日本では9種が知られています。しかしながら、分類学者によっては淡水クラゲ目にヒドロ虫綱の花クラゲ目の種を含めるなど、その分類は混乱しています。さらに近年、日本沿岸では淡水クラゲ目の未同定種がいくつも報告されてきました。沖縄で見つかった種については未記載種(新種)であることがわかり、コモチカギノテクラゲモドキ Scolionema sanshinという名をつけました(Toshino 2017)。最近では同じく沖縄近海からハナガサクラゲ属の未記載種を発見し、デイゴハナガサクラゲ Olindias deigoと名付けました(Toshino et al. 2019)。
日本沿岸ではまだまだ多くの日本未報告種や未記載種が存在すると考えております。これらについては形態観察、DNA分析、生活史観察の3つの手法を用いて系統分類学的研究を行い、日本産淡水クラゲ目の分類を整理することを目的とします。