本気のかくれんぼ―クラゲムシを探せ―
海の宝石クシクラゲ
近年、クラゲの人気は高まっており、日本各地の水族館でクラゲが展示されるようになってきました。その中でもひと際目を惹く、七色に輝く美しいクラゲをみたことがある方もいるのではないでしょうか?その正体はクシクラゲです。クシクラゲは有櫛動物門に属するクラゲの仲間で、櫛板(くしいた)と呼ばれる繊毛が一列に並んだ板状の構造をもつことが特徴です。櫛板を波打つように動かすことでクシクラゲは水中を移動します。櫛板に当たった光はCDの表面のように光が反射・屈折されるため、七色に光ります。
漂うことをやめたクラゲムシ
クシクラゲの多くは終生プランクトンで、生まれてから死ぬまで水中を漂って生活します。しかし、漂うことをやめたクシクラゲたちがいます。その名もクラゲムシ。クラゲなのかムシなのか分かりづらいですが、クシクラゲの仲間です。クラゲムシの仲間は他のクシクラゲとは全く異なる形態を示します。クラゲムシの体は平たく、薄い膜のようで一見するとヒラムシとよく似ています。また、クシクラゲの特徴である櫛板を欠くため、泳ぐことができません。普段は海底を虫のように這って生活します。
クラゲムシは脆弱な体に加え、自身を守るための武器を持っていません。そのため、外敵に襲われたら成す術なく食べられてしまうことでしょう。しかしながら、クラゲムシは数億年以上前から現在まで滅びることなく生き延びてきました。それはクラゲムシが類い稀なるかくれんぼの達人であったからであると考えられます。 クラゲムシは動物の体表面や海藻の表面に付着して生活します。西日本で普通にみられるベニクラゲムシは潮間帯の転石裏に生息し、石灰藻に擬態することが知られています。また、トゲトサカの仲間に共生するクラゲムシの一種Coeloplana huchonaeは宿主と同じ赤い体色をもち、宿主に溶け込むようにして付着しています。カタトサカの仲間と共生するコマイクラゲムシはカタトサカのポリプと非常に良く似た色の背面突起を備えており、徹底した擬態を示します。
クラゲムシの分類・生態の解明に向けて
クラゲムシはその存在自体があまり知られておらず、専門家もほとんどいないため、分類や生態に関する研究はあまり進んでいません。
本プロジェクトでは四国西南部を中心に採集調査を実施し、どのようなクラゲムシが(クラゲムシの同定・分類)、どこでどのくらいの種数生息するのか(クラゲムシ相)、どのような宿主、基質に付着するのか(共生関係)を明らかにします。
プロジェクトの進捗