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ハブクラゲの生態に関する研究

超危険なハブクラゲ、その一生を明らかにする。

地球上で最も強い毒をもつキロネックス Chironex fleckeri. その近縁にあたるハブクラゲは致死的な毒をもち、深刻な刺傷被害をもたらします。しかしながら、ハブクラゲの生態はよくわかっていないことが多く、特に生活史(一生)については謎に包まれています。本プロジェクトではハブクラゲの生態解明の一環として、生活史を明らかにすることを目指します。

ハブクラゲの生態に関する研究

ハブクラゲとは?

 箱型の傘をもつクラゲの仲間である立方クラゲ類は猛毒をもつことから大変恐れられています。立方クラゲ類の1種であるハブクラゲは日本では琉球列島以南に生息し、夏の海水浴シーズンに出現することから毎年多数の刺傷被害が発生しています。ハブクラゲに刺されると重症化することもあり、これまでに3例の死亡事故が起こるなど、公衆衛生上の大問題となっています。

ハブクラゲの生活史解明に向けて

 クラゲは浮遊生活するメデューサ(クラゲ)と底生生活するポリプを世代交代する生活史をもちます。毎年時期が来ると、ポリプからクラゲが生まれます。クラゲのグループによってポリプの形やクラゲの生まれ方に違いがみられます。ハブクラゲが属する立方クラゲ類の場合、ポリプは壺のような形をしていており、触手の先には刺胞が備わっています。また、立方クラゲ類では1つのポリプがそのまま1個体のクラゲへ完全変態します。他のクラゲではポリプからたくさんのクラゲが生まれ、それが何度も繰り返されるのですが、立方クラゲ類の場合、一回きりなのです。

〇 誰も見たことないハブクラゲのポリプ
 ハブクラゲについてはこれまで様々な調査がなされてきましたが、ポリプが野外で発見されたことはありません。クラゲの発生源はポリプであるため、その基本的な情報を得ることは刺傷被害対策における基礎となります。私は野外では発見が難しいハブクラゲのポリプを研究室内で育成し、実験下で生理・生態や行動を調べようと思います。

プロジェクトの進捗

2019年5月1日

プロジェクトの開始

ハブクラゲの生態解明に向けてプロジェクトを開始しました。

2019年8月29日

ハブクラゲの採集

沖縄でハブクラゲを約10個体採集しました。


群泳するハブクラゲ

2019年9月1日

受精卵の採卵に成功!

ハブクラゲを雌雄一緒に水槽内で飼育したところ、受精卵を得ることに成功しました。直径0.1 mmほどの小さな卵です。卵は約1日でプラヌラへ発達しました。赤い粒々は光を感知するための眼点です。


ハブクラゲの受精卵


ハブクラゲのプラヌラ

2019年9月10日

初期ポリプへ育成に成功

プラヌラが定着し、小さな初期ポリプへ発達しました。ポリプは直径0.1 mmほどで触手を2本持っています。現在、飼育観察中です。


ハブクラゲの初期ポリプ

2021年4月(予定)

稚クラゲの育成

ポリプから生まれた稚クラゲを育成し、形態変化を観察する。


2021年9月(予定)

学会発表、論文執筆

得られたデータを解析し、学会で発表する。
また、論文にまとめ公表する。

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