戸篠主任研究員がプランクトン学会奨励賞を受賞しました。
授賞式は3月20日にオンラインにて執り行われました。
詳細は以下の通りです。
研究課題名:「箱虫綱の生活史観察に基づく分類学的研究」
選考理由:これまで、箱虫綱の分類および生活史に関する研究は日本では皆無だった。戸篠会員はこの課題に果敢に取り組み、日本産箱虫綱6科7属9種を確認し、さらに日本から新科・新属・新種のリュウセイクラゲ(流星水母)Meteorona kishinouyei Toshino, Miyake & Shibata, 2015を発表した。また、日本産でありながら、生活史や生態が全く解明されていなかったヒクラゲMorbakka virulenta (Kishinouye, 1910)について、長期に渡る室内観察から、ポリプの形態が箱虫綱のポリプとは全く異なり、むしろ鉢虫綱のポリプの形態をもつことを明らかにした。さらに、本種が箱虫綱では見られないと思われていたストロビレーションを起こし、基部のポリプが再度無性生殖をするということが明らかになり、鉢虫綱と類似した生活史を持つことを世界に先駆けて解明した。その後も、戸篠会員らの研究グループによってヒクラゲの分布、出現時期、成長などが解明され、我が国だけでなく世界中の箱虫綱の研究者に大きな影響を与えている。
このように、戸篠会員による箱虫綱の研究は世界的に注目され、本生物群の研究に大きな進歩をもたらした。現在、戸篠会員は海外の箱虫綱、鉢虫綱、ヒドロ虫綱の研究者と共に、形態および遺伝子解析による箱虫綱の系統分類について国際共同研究を進めている。また、これまでに開発した箱虫綱の研究手法を鉢虫綱・ヒドロ虫綱・有櫛動物門にも応用し、未記載属・未記載種や日本初記録種の報告を積極的に行っている。さらに、戸篠会員は東南アジア(タイ・マレーシア・フィリピン・ベトナム)における国際共同研究に参画する傍ら、アウトリーチ活動も積極的に行っている。
以上のように、戸篠会員は我が国では学術的知見の少なかった箱虫類に関する研究成果を、査読付き原著論文(28編)や学会発表(55件)によって発表してきた。これらの研究成果のうち、Plankton & Benthos Researchには原著論文を10 編(うち筆頭著者5編)、日本プランクトン学会・日本ベントス学会合同大会では19件(うち筆頭者12件)を発表しており、本学会の活動にも積極的に参画している。さらに、戸篠会員は国内におけるアウトリーチ活動も活発に行っており、本学会の若手の会における世話人を務めつつ、学生や若手研究者の育成に貢献している。