イシダイ×イシガキダイ(雑種)
Oplegnathus fasciatus × O. punctatus
イシダイとイシガキダイの天然交雑はイシダイの特徴である横縞とイシガキダイの特徴である小黒斑をあわせもっている。近畿大学では人工的な交配、養殖もおこなわれており、「キンダイ」という呼称で流通されている。雑種であるため、生殖能力はもたず、交雑個体×イシダイや交雑個体×イシガキダイといったあいだで繁殖がおこなわれることはない(おこなわれたとしても正常に生育しない)。「生物集団が自然条件下で交配し、継続的に子孫を残すことをできること」は生物学的な種の概念であるが(少なくとも動物においては)、このような交雑個体の場合、「自然条件かでは交配するが、継続的には子孫を残せない」ためイシダイとイシガキダイは同一種ではなく、別種ということになる。ある生物が新種であるか議論される際、「交雑個体では?」という可能性は常にある。たしかに「自然条件下で交配がおこるかどうか」について検証することは不可能であることがほとんどである。こういった場合、ざっくりいうと「これだけ形態が異なっており、かつその特徴が安定的である(あろう)」ということが証明されていれば、これらのあいだに自然交配は起こらないと推定し、別種としてとらえる。これを形態的種の概念という。(小枝)