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サンゴ食害生物の大発生メカニズムを解明せよ!

いつ、どこで、なぜ、大発生するのか?

これまでに、オニヒトデやサンゴ食巻貝は稀に大発生し、サンゴ群集に大きな被害を齎してきました。
彼らは、なぜ大発生するのでしょうか?
また、大発生を確認してから駆除活動を実施した場合は手遅れになる可能性があります。
彼らは、いつ、どこで、大発生するのでしょうか?
本プロジェクトでは、彼らの大発生の謎に迫ります!

サンゴ食害生物の大発生メカニズムを解明せよ!

サンゴ食害生物

 サンゴを主な食物とする生物としてオニヒトデやサンゴ食巻貝と言われる小型の巻貝類が知られています。彼らは成長の早いミドリイシ科のサンゴを好んで食べる傾向があります。それによって、成長の遅い他のサンゴが生息できたり、稚サンゴが加入するための裸地を提供します。そのため、これらのサンゴを捕食する生物は、サンゴの種の多様性を支えることに貢献しているとされています。しかし、彼らは稀に個体数が激増し、あらゆるサンゴ種を食べつくします。オニヒトデおよびサンゴ食巻貝類の大発生は世界各地で報告されており、多くのサンゴ群生地に深刻な被害を齎してきました。そのため、これらの種は「サンゴ食害生物」として駆除活動が行われてきました。

〇 オニヒトデ
 オニヒトデは、体表面に有毒な針をもつ大型のヒトデで、体長は直径40 cmを超えます。本種は、太平洋、インド洋、紅海などの世界各地のサンゴ群生地に生息しています。日本では1970年代前半より、沖縄や八重山などのサンゴ礁域から九州や四国西南部などの非サンゴ礁域に至る様々な海域で大発生が報告されています。
 四国西南部では、1970年代の大発生以降、現在に至るまで継続して駆除活動が行われており、その駆除数は、1980年代前半に一度収束しましたが、2000年頃に再び個体数が増加しました。この2度目の大発生は、2010年頃を境に収束しつつありましたが、近年再び増加に転じており、油断を許さない状況が続いています。

オニヒトデ

〇サンゴ食巻貝
 サンゴ食巻貝は 、サンゴの組織を摂餌する肉食性貝類の総称であり、歯舌という櫛状の歯を用いてサンゴの組織をそぎ落として摂餌するカゴメガイ亜科の貝類と、歯舌を有さず、サンゴの組織を吸引して摂餌するサンゴヤドリガイ亜科の2つのグループに分けられます。日本国内では、カゴメガイ亜科が10種、サンゴヤドリガイ亜科が6種の生息が記録されています。これらの巻貝類は、通常1~10個体程度の集団を形成してサンゴの枝の隙間などに生息しています。しかし、カゴメガイ亜科に属するDrupella属の巻貝類は稀に1000個体以上からなる集団を形成してサンゴ群集に大きなダメージを与えることが知られています。国内においても1980年頃から沖縄や九州、四国西南部、三宅島などで大発生が報告されています。
 四国西南部では、 1980年代後半の大発生以降、現在に至るまで駆除活動が継続的に行われており、現在では駆除個体数が低い値で推移しています。駆除数には大きな年変動があり、今後も警戒する必要があります。

カゴメガイ亜科に属する貝類
サンゴヤドリガイ亜科に属する貝類

大発生のメカニズムの解明を目指して

 オニヒトデやサンゴ食巻貝の大発生の要因には、海水の富栄養化や乱獲による捕食者の減少、海水温や栄養塩の変化など様々な説があります。しかしながら、未だに大発生の要因の解明には至っていません。
彼らはいつ、どこで、どのように大発生するのでしょうか?
 大発生のメカニズムを解明するためには、生態学的な研究が必要不可欠です。
そこで、本プロジェクトでは、オニヒトデおよびサンゴ食巻貝の生態を様々な切り口からひも解くことで、大発生のメカニズムを解明し、世界各地で行われているサンゴ保全活動がより良いものになることを目指します。

〇発生状況のモニタリング

 四国西南部で行われているサンゴ食害生物の駆除活動のデータを収集し、常に本海域における発生状況の把握を行います。また、活動に同行することでサンゴへの被害状況のモニタリングを行います。
 サンゴ食巻貝類に関しては、駆除された巻貝を提供して頂き、種組成とそれぞれの個体数を調査します。

駆除されたサンゴ食巻貝類の種同定と個体数を計測します。

〇産卵期の特定

 食害生物の駆除活動において、次世代の加入を抑制することは、極めて重要なことです。
 産卵期は、海水温と関係している可能性が高く、海域ごとに産卵期が異なることが示唆されます。そのため、四国西南部におけるそれぞれの種の産卵期を明らかにする必要があります。
 産卵期を特定し、その時期よりも前に駆除を行うことで、活動の効率が上がることが期待されます。

死サンゴに卵嚢を産み付けているサンゴ食巻貝

〇浮遊幼生の動態

オニヒトデやサンゴ食巻貝は、卵から孵化した後、数週間をプランクトンとして海を漂いながら生活しています。浮遊幼生期の生存率の増加が大発生の要因の一つであるとされていますが、彼らは広い海域のどこで生まれ、どこを漂い、どこに定着するのでしょうか?本テーマでは、オニヒトデやサンゴ食巻貝類の浮遊幼生の加入や分散を明らかにします。

オニヒトデの幼生

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