小枝 圭太

元研究員(2021年4月30日任期満了にて退職)

「魚を獲って採って捕りまくる、そこから研究が始まる」
主な経歴

1986年2月 京都市生まれ
2009年3月 琉球大学 理学部 海洋自然科学科 生物系 卒業
2011年3月 琉球大学大学院 理工学研究科 海洋自然科学専攻 修了
2013年3月 琉球大学大学院 理工学研究科 海洋環境学専攻 短期修了 博士(理学)
2013年4月 琉球大学理学部 日本学術振興会 特別研究員(DC)から 特別研究員 (PD)に資格変更
2014年4月 鹿児島大学総合研究博物館  日本学術振興会 特別研究員(PD)
2017年4月 国立海洋生物博物館(台湾) 日本学術振興会 海外特別研究員
2019年4月 公益財団法人 黒潮生物研究所 研究員
2021年4月 退職

研究業績

研究領域や意気込み

 1986年、京都生まれ。海も川も遠い比叡山で育ち、幼少期は昆虫採集に明け暮れる。立ち寄った本屋でふと魚の図鑑を手に取ったことをきっかけに、暖かい海の生き物に憧れ、琉球大学に入学。ダイビング部に所属して週の半分以上は海に入る生活を送るなかで、魚類の面白さと多様性に惚れ込んで研究の道へ。学位取得後は、鹿児島大学総合研究博物館で分類学と図鑑づくりを学ぶ。台湾の国立海洋生物博物館における2年間の海外生活を経て、サンゴ礁性魚類だけでなく、深海魚についての見識も深める。2019年4月より当研究所に赴任。 専門は魚類学で、ハタンポ科を中心にサンゴ礁性魚類から深海魚まで魚類の分類、生物地理、生活史、魚類相などを研究中。

主となる研究テーマ

四国南西部における海洋魚類相の把握

 四国の南西端は黒潮の影響を強くうけるため、熱帯性の魚類が数多く出現するという特性があります。そこで四国南西部に出現する魚類を幅広い手法と場所で収集します。よく似た種との比較や正確な種の同定には標本が不可欠であるため、採集した標本の鰭を綺麗に立てて写真を撮ったのち、当研究所に学術標本として保管します。採集→標本作成→管理という地道な作業の積み重ねですが、これを続けながら他の研究機関との共同研究を進めることで、四国南西部における魚類相を明らかにしたいと思っています。また、採れた魚類のうち、未記載種(いわゆる新種)や初記録種など特筆すべき種について随時報告する予定です。「 新種なんてそんなにすぐにみつかるの?」とよく聞かれますが、海にはまだまだたくさんの未知の生き物たちが暮らしているのです。

リュウキュウハタンポの耳石薄層切片。白く見えるのが年輪。

四国南西部における熱帯性魚類の生活史の推定

 四国南西部には黒潮にのって流れてきた数多くの熱帯性魚類がみられます。熱帯性魚類とひとことにいっても冬季に死滅する種、越冬はするが再生産ができない種、不完全ながら再生産をおこなう種など、生態学的にもさまざまな魚類が生態系を構築しています。ただし、将来的な海水温の上昇により、彼らの生態が変化していくことが予想されています。つまり、今は冬の低水温で死んでしまう魚が、そのうち冬を越すようになり、さらには卵まで産むようになるかもしれない、ということです。そこで収集した魚類のうち、指標となる種を選び、これらの生活史を明らかにすることを目的として、生殖腺の成熟度の確認や耳石を用いた年齢査定などをおこないます。これにより、再生産の有無や産卵期の変化、越冬の有無など現在の環境における彼らの生き方を知ることができるのです。

サンゴの産卵が海産魚類生態系に与える影響

 サンゴの産卵は、主に夏季の夜間におこなわれる大きなイベントです。魚類には、サンゴの卵を捕食するものが多くみられ、昼行性の種が夜間に活動的になるなど劇的な変化をみせるものも存在します。サンゴの産卵前、産卵中、産卵後における魚類の行動の変化や、みられる魚種の変化に加えて、複数の魚種について産卵前後における栄養状態などを比較することで、サンゴの産卵が海産魚類生態系に与える影響を評価してみたいと考えています。

サンゴの卵を食べるチョウチョウウオ
これまでに編者(前列)あるいは著者(後列)として関わった図鑑

海の生き物図鑑の作成

 四国南西部とりわけ柏島周辺海域は、日本の温帯域のなかで最も熱帯性海洋生物が豊富な海域のひとつとして知られています。しかし、このエリアの魚類あるいは海洋生物について広く扱った図鑑はありません。この海域の学術的・非学術的な魅力を考えると、とても勿体ない状況といえます。そこで、この魅力を地域の内外へと発信するため、学術的にも教育啓蒙にも有用な地域の図鑑を作成します。これまで数多くの図鑑作成を主導・補助として携わった経験を活かして、四国南西部の海洋生物に関する知見を網羅した図鑑をめざします。本としての図鑑に先立ち、Webページでの図鑑の作成をすすめていきます。

これまでに記載した主な未記載種たち


ダイトウハタンポ
Pempheris ufuagari Koeda, Yoshino & Tachihara, 2013

ボニンハタンポ
Pempheris familia Koeda & Motomura, 2017

ニゲミズチンアナゴ
Heteroconger fugax Koeda, Fujii & Motomura, 2018

アミメオヤビッチャ
Abudefduf nigrimagro Wibowo, Koeda, Muto & Motomura, 2018

ラディセファルス科ラディセファルス属
Radiicephalus kessinger Koeda & Ho, 2018

ホテイエソ科ホテイエソ属
Photonectes banshee Koeda & Ho, 2018

カクレウオ科シンジュカクレウオ属
Onuxodon albometeori Koeda, 2019

ホテイエソ科ダイニチホシエソ属
Eustomias dendrobium Koeda & Ho, 2019

モノノケトンガリサカタザメ
Rhynchobatus mononoke Koeda, Itou, Yamada & Motomura, 2020

モノノケトンガリサカタザメ(腹面)

これまでに報告した主な日本初記録種たち


ユメハタンポ (沖縄島・八重山諸島から報告)
Pempheris oualensis Cuvier, 1831

キビレハタンポ (西表島から報告)
Pempheris vanicolensis Cuvier, 1831

オオヒカリキンメ(沖縄島から報告)
Photoblepharon palpebratum (Boddaert, 1781)

ボロジノハナスズキ(南大東島から報告)
Liopropoma tonstrinum Randall & Taylor, 1988

ドナンメギス(与那国島から報告)
Cypho zaps Gill, 2004

ハナサキタナバタメギス(トカラ列島平島から報告)
Pseudoplesiops immaculatus Gill & Edwards, 2002

ハチモンジウツボ(与那国島から報告)
Gymnothorax breedeni McCosker & Randall, 1977

ムラクモキカイウツボ (与那国島から報告)
Uropterygius fasciolatus (Regan, 1909)

アマノガワギンガエソ(駿河湾から報告)
Bathophilus longipinnis (Pappenheim, 1914)

ロケットヒメジ(鹿児島県内之浦湾から報告)
Parupeneus jansenii (Bleeker, 1856)

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