目﨑 拓真 Takuma Mezaki

専務理事・研究所長・事務長

「変人だって?それは最高の誉め言葉だね。夜の海はいつも
ワクワクするよ。」

経歴

  • 1978年10月 東京都生まれ
  • 2001年3月 高知大学理学部自然環境科学科(旧地学)卒業
  • 2003年3月 東北大学大学院理学研究科地学専攻 博士課程前期卒業
  • 2008年3月 東北大学大学院理学研究科地学専攻 博士課程後期
           単位取得退学
  • 2008年4月 黒潮生物研究財団黒潮生物研究所に入所 任期付研究員
  • 2009年3月 東北大学大学院 博士(理学)取得
  • 2009年4月 任期無し研究員
  • 2014年4月 主任研究員
  • 2018年8月 事務長に就任
  • 2019年1月 研究所長に就任
  • 2019年2月 理事・専務理事に就任

学会

  • 日本サンゴ礁学会
  • 日本生態学会

委員など

  • 日本サンゴ礁学会 調査安全委員会・サンゴ礁保全学術委員会・選挙管理委員会委員長
  • 2021-2023 気候変動適応広域協議会 中国四国地区 アドバイザー(終了)

研究業績

研究領域や意気込み

産卵観察中!

 東京生まれ・沖縄県と三重県育ち、物心ついたときには沖縄のサンゴ礁の海で泳いでました。父が琉球大学でサンゴ礁地形の研究をしていた影響を受け、サンゴ研究の道へ。黒潮生物研究所に入所し、サンゴの産卵生態の研究に没頭。「世界中のすべてのサンゴの産卵をこの目でみたい!」を目標に、ライフワークとして研究しています。また、産卵観察中に得た卵と精子からサンゴの種苗を作成し、特に希種サンゴの完全養殖を目指す取り組みも行っています。とにかくサンゴのことは何でも知りたい!

有藻性サンゴ類に関する研究

有藻性サンゴとは?

 有藻性サンゴ(以下サンゴ)とは、褐虫藻と呼ばれる藻類を体内に共生しているイシサンゴ類のことで、クラゲやイソギンチャクと同じ刺胞動物門に属しています。日本国内では約400種以上のサンゴが生息しています。
 サンゴの形は、枝状、卓状、塊状、被覆状、円盤状、板状、葉状などに大きく分類されます。波当たりが強いなど環境に応じて、枝が細くなったり、太くなったり、板が厚くなったりと変化します。とても同じ種とは思えないような形になることもあり、ひとつとして同じ見た目のサンゴはなく、見飽きることはありません。

多様なサンゴの形1
多様なサンゴの形2
光合成をしてサンゴに栄養を供給
高知県宿毛市沖の島のサンゴ群集
四国のサンゴの分布状況の変化(1931~2012年)

四国のサンゴ相及びサンゴ群集の分布状況に関する研究

 四国はサンゴ礁のない海域ですが、温暖な黒潮の影響を 受け高緯度ながら多様なサンゴやサンゴ群集がみられます。そのため四国では高緯度に特有な種とサンゴ礁域に多い南方系のサンゴの両方が見られるという特徴があります。これまで研究所では四国で約140種のサンゴを記録し、サンゴ礁のない海域では四国はもっとも多様なサンゴが生息するエリアだという事がわかってきました。また、近年の海洋温暖化で、サンゴの分布範囲が拡大していることが明らかになりました。四国内のサンゴ群集分布は長年の調査から、高知県沿岸のほぼ全域、愛媛県では八幡浜市周辺より南の海域、徳島県では海部郡牟岐町より南の海域に分布することがわかってきました。四国では外洋域、内湾域、島嶼域など地形に 応じた多様なサンゴ群集がみられます。

四国の多様なサンゴ群集景観

卓状ミドリイシ優占
枝状ミドリイシ優占
シコロサンゴ優占
コマルキクメイシ優占

サンゴ類の繁殖に関する研究

 研究所の基幹研究として、2001年の開所以来サン ゴ類の繁殖の研究に取り組んでいます。

〇繁殖生態 これまで約60種以上のサンゴ類の産卵状況を野外で記 録しました。 10年以上の調査記録からミドリイシ類の産卵が種や環 境に応じて、満月以外にも産卵することや、ミドリイシ以 外のサンゴの多くが、1ヶ月に約1回の種独自の産卵パターンをもっていることを明らかにしました。また、高知県では多くのサンゴが下弦に産卵することを明らかにしました。

野外でのサンゴの産卵の記録
高知県のミドリイシ類の産卵と月の満ち欠けとの関係(左)、高知県の産卵が記録された日付(旧暦)(右)
スギノキミドリイシの産卵(研究所前)
クシハダミドリイシの産卵(瀬底実験場前)4K

宝石サンゴ類の繁殖に関する研究

 サンゴと名のつく繁殖は、有藻性イシサンゴ類に限らず、その繁殖戦略がどのようになっているのか個人的に興味があります。しかし、水深約100 m以深に出現する宝石サンゴ類の繁殖に関しては、潜水で観察することが非常に困難で、私の得意とする水中で粘り強く観察を続ける技が使えません。そこで研究所の水槽で飼育しながら繁殖を観察しています。
 2021年にはアカサンゴの精子嚢の放出を確認することができましたが、この精子嚢を雌のアカサンゴ群体がどのように受け取るのか、雌群体から卵は放出されるのか、体内受精なのかなどまだまだ謎がいっぱいです。いつの日か繁殖方法を明らかにし、宝石サンゴ類の種苗を愛でたいです。

水槽で飼育しているアカサンゴ
精子嚢の放出

有藻性イシサンゴ類の種苗づくり

 サンゴの産卵の研究をするなかで、取れた卵や精子をもちいて、種苗の作成をしています。特に、産卵がなかなか見られない稀種や親の形になるまでの過程がわからない種を観察するために種苗を作成しています。

もうすぐ1歳のコハナガタサンゴ。すでに親の形の片りんが見えます。
瓦の定着板に着生させたサンゴ
卵から育てたヒユサンゴ(2歳半)の種苗 Trachyphyllia geoffroyi 

サンゴ類の温暖化の応答に関する研究

 近年の海洋温暖化で、四国では温帯性の海藻類が減少し、サンゴの分布する範囲や被度が増加してることがわかってきました。加えて、サンゴ礁で見られる南方系のサンゴの加入が四国西南部で見つかっています。 また、四国内でサンゴの分布範囲がより北へ拡大しています。
 また、夏季高水温によるサンゴの白化(白化現象)が1998年から四国でも観察されはじめ、数年に1回のペースで白化が確認されています。台風などによって水温が下がると下記の写真のように白化から回復することもあります。四国では温暖化とは真逆の冬の低水温が原因で、サンゴが大量斃死することが確認されています(愛媛県、徳島県、高知県)。

高知県香南市夜須町のサンゴと海藻の変化
(サンゴが増えて、海藻が減少)
2000年以降に高知県で見つかった南方系のサンゴ
(左:サボテンミドリイシ・右:イタアナサンゴモドキ)
藻場の中で育つサンゴ(エダミドリイシ)愛媛県
夏季の高水温で四国でもサンゴの白化が見られます
冬季の低水温によるサンゴの斃死(高知県研究所前)

サンゴ類のモニタリング活動

 サンゴの生育状況、白化、オニヒトデの食害、台風によるサンゴの破損などのかく乱を記録し長期的なサンゴ群集の変化をみるため、研究所では環境省や地元の団体などと協力して、四国の33地点で毎年サンゴのモニタリングをしています。調査地点によってはボランティアを募集して、学習しながらモニタリングの体験や次世代の保全活動の担い手の育成をするような活動をしています。

いろいろなモニタリング活動

長寿サンゴ(巨大サンゴ)を探すこと!・観察すること!

 サンゴは環境がよければ長生きして、種によっては巨大な群体になります。初めて潜る場所では、まだ見ぬ巨大な長寿サンゴをいつも探しています。見つけた時の驚き、喜び、サンゴの神々しい様子は水中で拝みたくなるほどです。

千年サンゴ(徳島県)
2023年から各地の長寿サンゴを3D化プロジェクトスタート!
サオトメシコロサンゴの群生(高知県)
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