財団法人 黒潮生物研究財団 設立趣意書

 黒潮はフィリピン近海に端を発し、琉球列島の西側を北上した後九州、四国、本州の南岸を通って三陸沖から東進する世界最大の暖流である。またその分流である対馬海流は日本海を北上してほぼ日本海の全域に影響を及ぼしている。このように我が国沿岸の大部分は黒潮の支配下にあるということができる。
 また、黒潮は北太平洋海流、カリフォルニア海流、北赤道海流と名を変えて北太平洋を時計回りに循環する周回海流における西側の切片であるという性格を持っている。我が国沿岸の生物群集が黒潮の支配下にあるということは即ち北太平洋周回海流の支配下にあるということを意味する。
 さらに黒潮の影響は海中にとどまらず、広く我が国の気象や海象に及んでいることも忘れてはならない。黒潮がもたらす気候の変動は降水や日射、風など様々な形で陸域にも影響を与え、陸域の環境に与えた影響は最終的に海の環境変動の要因にもなっている。北太平洋周回海流全体として見ても、エルニーニョやラニーニャが我が国の気候変動を引き起こすことによって生物群集に影響を及ぼすことは周知の事実である。
 以上のように、我が国の生物群集を考えるとき、常にこの群集が黒潮の影響下にあることを忘れてはならない。
 ところで黒潮流域の生物を研究する機関は沖縄県から千葉県まで数多く存在するが、四国においては人間生活に黒潮が色濃く影響を与えているにもかかわらず、水産学分野を除いて黒潮流域の生物に関する研究施設が十分に整備されておらず、沖縄(琉球大学瀬底臨海実験所)から、紀伊半島(京都大学瀬戸臨海実験所・海中公園センター錆浦研究所)まで、千キロ近くも海域生物群集に関する研究施設の空白地帯が生じている。
 そこで、サンゴ礁地域と温帯地域の中間点に位置し、黒潮の影響を色濃く反映する生物群集が形成されている高知県において、黒潮流域における環境と生物との関わりを調査研究し、地域の環境生物学的特性の理解を図り、他地域との比較を行い、情報の収集、整理、発信を行い、もって環境の変動に対する自然環境保全対策の推進に資するとともに、人類と野生生物が共存可能な社会の創造に寄与することを目的として、財団法人 黒潮生物研究財団を設立し、以下の事業を行う。   

  1. 黒潮流域の生態系及び必要ならば他の生態系(以下、黒潮生態系等という)における生物及び環境に関わる調査研究を執行もしくは受託しまたはその援助を行うこと
  2. 黒潮生態系等における生物及び環境に関わる資料を収集整理し提供すること
  3. 黒潮生態系等における生物及び環境の保全などに関わる事業を執行もしくは受託しまたはその援助を行うこと
  4. 当財団の行った調査研究、事業などの成果を公表しまたは教育啓蒙などの目的で講演会、談話会、野外学習会などを開催し並びに図書及び機関誌を発行すること
  5. 高知県及び他地域の生物及び環境に関する県、国及び他の地方公共団体の施策に協力すること
  6. その他当財団の目的を達成するため必要な事業